【HabuColumn】玉城久美子 #01 魔法の言葉「てぃーあんだ」
By habu-connection On 17 8月, 2018 At 12:17 AM | Categorized As HABUコラム, 玉城 久美子 | With 0 Comments

【 HabuColumn 】 玉城 久美子
#01 魔法の言葉「てぃーあんだ」

全国各地、暑い日が続いています。
「沖縄に避暑に行く」なんていう言葉もチラホラ聞こえてきますが、それも納得!というくらいの酷暑です。
私も例年にないほど冷たいものを摂ってしまい、そしてクーラー三昧。
気づけば体が冷えている、なんていうこともしばしば。
「あるある!」と思ってくださった方、こういう時には「カチューユ」を作ってみませんか?
鰹 + 湯 = カチューユ。家庭料理として根付く、昔ながらの即席スープ。
お椀にたっぷりの鰹節と味噌または梅を加えてお湯を注ぐだけのもので、鰹節も具としていただきます。
鰹節にこだわれば美味しさ倍増ですし、ネギやワカメなどがあれば更に豪華!
私は小分け冷凍したモズクを入れることも(モズクって冷凍できるんです!)。
ミネラルや水分も補給できる簡単スープ、夏の朝食にオススメです。
暑さを乗り切る食の知恵が、沖縄には沢山あります。

さて今回は、沖縄の食を表す言葉の一つ「てぃーあんだ」について書いてみます。
直訳すると「てぃー = 手」+「あんだ = 油(脂)」 。
「手の油が染み込むほど、料理を念入りに作ること」を指し、時間や手間ひまをかけるという物理的な意味合いだけではなく、食べる人のことを思う「もてなし」の気持ちも含んだ言葉です。
沖縄料理店の店名としても見かけますが、「きっと美味しいに違いない」と期待が募る魔法の言葉でもあります。

「てぃーあんだ」をキーワードに話を膨らませますが、琉球王朝の流れを汲む もてなしの琉球料理「辻料理」が、家庭料理に与えた影響について少々深掘りを。
那覇の辻といえば300年ほど続いた遊郭街です(1944年頃終焉)。
遊郭といっても、同時に料理屋であり宴会場であり、歌や踊りなどの芸能も演じられる社交の中心地でしたので、女性たちはやってくる政財界の要人や街の富豪たちに「てぃーあんだ」を重視した料理をふるまい、そして細やかにもてなしました。
こうした環境のもと女性たちはお互いに競い合い技術は洗練され、当時の最高水準の琉球料理はこの地で発達したと言われています。

辻料理はその場所で供されるだけに留まらず、徐々に那覇の富裕層の家庭に取り込まれ、やがて一般家庭まで裾野を広げていくこととなるのですが、さて、どういう経緯で取り込まれていったのでしょうか?
代表的な二説をご紹介しますが、まずは一つ目です。
お盆やお正月といった節目に、辻の女性たちは贔屓にしてくれる旦那の自宅へ料理を持って挨拶に行く習慣があり、受け入れる側の家庭では普段目にすることのないご馳走を知ることとなりました。
更には旦那の家族と親しく付き合い、何かの行事でもあれば家族の一人として手伝いに行くほどの者もいたようで、これらのやり取りを通して辻の味が家庭に運び込まれていったというわけです。
そして2つ目。
辻料理に刺激された妻たちの頑張りによる、技術の向上です。
足繁く辻に通う夫への「家計的にも感情的にも嬉しくない…でも面と向かって止めたり怒ることはできない」というジレンマから、辻料理に負けないようにと、自宅で酒客をもてなす工夫が重ねられました。

2〜3日かけてラフテーを作る、自家製の豆腐ようを出す、泡盛の古酒も作る、毎晩の夫の晩酌のためにも酒は切らさない…そんな具合だったとか。
辻の女性たちそして家庭を守る妻たちの、誇り高い(負けん気の強い?)沖縄女性らしさが垣間見られるエピソードです。

時を進めて2018年の現代。
私もこういう仕事をしていながら、家族や自分のために時間をかけて料理を作ることは本当に難しいです。
忙しくて食べること自体に時間を割けない方も多いでしょうし、時短料理にも気持ちが伝わる美味しい料理は沢山あります。
ですが、たまにはてぃーあんだ料理(沖縄料理に限らず、高価なものに限らず)を作ってみたり食べに行ってみたり、食べるもの・食べる空間・食べる時間をゆったりとした気持ちで楽しみたいものです。

・ 参考資料:
 「食べる、飲む、聞く 沖縄 美味の島」/吉村喜彦/光文社新書
 「琉球料理と沖縄の食生活」/翁長君代/績文堂
 「聞き書 沖縄の食事」/尚弘子/農山漁村文化協会
 「沖縄いろいろ事典」/ナイチャーズ 垂見健吾ほか/新潮社
 「私の琉球料理」/新島正子/柴田書店
 「写真集 那覇百年のあゆみ」/那覇市企画部市史編集室
 「おとなスタイル」公式WEBサイト『沖縄の花街、母から娘へつなぐ本物の琉球料理』

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